プールでの忘れ物

よく漫画やアニメで、プールに来て替えの下着を忘れるというオチの話がある。
私はああいうテーマの回を見ると、毎回自分の身に置き換えてしまって笑えないのだ。
いや、私に限らず絶対に誰でも一度や二度は経験した事実である、はずだ。

小学生の夏休み。
学校は休みになってもプールはある。
そんな謎のカリキュラムが存在するのが、小学生というものである。
ちょうど休みにも飽きているので、プールで友達に会えるのは面白くもあり、水に入るのも気持ちよくもあり、ということで、授業というスタンスよりもよっぽど楽しい水泳であった。
小学生というのは不思議なもので、色気なんか全くないようなものなのに、男女というものを意識し始める。
それなのに何故か更衣室というものがなく(今は知らない)、男女ともに一つの教室で着替えさせられたものだ。
特に女子というのは多感なものなので、決して隙を見せないよう、全身ばっちり覆い隠してくれる、てるてる坊主型タオルというものを重宝に使用して、着替えを行う。
あれは実に画期的なタオルだ。
ゴムの入ったタオルの上端部分は肩のところで止まるから、美容室でかけられるケープ様になって、タオルのなかで自由に手を動かせる。
着替えだって、誰はばかることなくスムーズに行えるのだから素晴らしい。
それでも、念入りにシャイであった私は、脱いだ下着をしまう瞬間すら恥ずかしく、プールのある日はもっぱら家から水着を着て、その上に私服を重ねて着てくる、というスタイルであった。
まったく、誰に見られて恥ずかしいというのやら。
それで、10回に1回は、替えの下着を忘れてきた。
水着を着て満足してしまうのだろう。
それで、プールから上がった後に愕然とするのである。
その後どうやって対処したか。
実はその記憶はない。
おそらく、思い出したくないような結果に陥ったために、自然に記憶から抹消されたのだと思う。
大方、あのよくあるオチのように、ぬれたままの水着の上に服をきて、まるで漏らしたかのようになって騒がれた、というお決まりの結果になったに違いない。

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